放射温度計の利点は非接触で物体の温度を測ることができるところです。生活の中で温度を知りたいけど測ることができない場面が多くあります。そんな時に便利なのが放射温度計です。従来は温度を測る対象の物体に検出部を直接当てて温度測定していました。接触ができないところとは、食品などの衛生面で問題がある場合、表面を傷付けることができない場合、導電素材の場合、測定箇所の微妙なずれによって温度が大きく変わってしまう場合などが考えられます。触れなければ感染のリスクもなく、測定物を傷付けることもありません。通電することもなければ測定箇所を厳密にする必要もありません。接触式ではできなかった環境条件で温度測定を行うことでコストの削減や安全性の確保が可能です。
放射温度計は赤外線の出方を校正
放射温度計は測定物から放射される赤外線の量によって温度を測ります。その放射される赤外線の量や出方は物質によって異なるため、校正が必要となります。物質から放射される赤外線の量は、温度に比例しています。高温であれば赤外線の量は大きくなることは変わりませんが、物質によってその放射の出方が異なります。その特性を割合でしましたものを放射率と言います。ちなみに人間の皮膚は0.98、生育している木は0.5から0.7です。このように素材によって異なる放射率に合わせて校正を行わないと全く意味のない温度が表示されることになります。測定部分の主たる素材を確認してその放射率に校正したり、実際に接触式の温度計で測定して校正することで正確な温度を測定することができます。
放射温度計と一般的な生活の関係性
放射温度計が活躍しているのは主に産業分野です。工場などオートメーションが進む中、人の手で温度測定していたのでは間に合わず効率が低くなります。放射温度計を使えば非接触で高速に温度測定が可能です。そのため食品加工の工場で多く採用されています。加熱処理した後の火のとおり具合、パッケージ前の冷却状況など温度の異常が食中毒の原因になることも考えられます。その他にも医薬品を入れる容器の温度管理、医薬品の生産工程における温度管理など薬の効き目に影響するような場合にも使われています。一般家庭で使われているもので耳から検温する放射温度計もあります。このように多くの分野で使われるようになり、現時点ではなくてはならない検査方法となりました。今後もより多くの製造工程で高速化を実現するために使われるでしょう。